酒と映画:ハードボイルドなハリウッドスターの軌跡

ハンフリー・ボガート

遅咲きの彼。 

若い頃はギャングの脇役ばかり。 40歳を超えたころから『マルタの鷹』や『カサブランカ』に出演して一気にハードボイルドなスターになりました。


   


結構苦労人なんですよね。 

基本的には自身のハードボイルドでスマートなイメージを壊さないために、汚れ役的なオファーに対しては殆ど出演しないというスタンスを貫いていたのですが、1951年公開の『アフリカの女王』では無精ひげに飲んだくれ、それに加えて頑固でどうしようも無い男の役を一転して引き受けたのでした。


   


そろそろ歳も重ねてきて演技派に転向したいという思いもあったでしょうし、何よりもこの作品は脚本が秀逸だったのが決定打になったと思います。

この作品で彼は念願のアカデミー主演男優賞を受賞したのですが、この映画は多難続きで、天候不順でセットが流される、病気で倒れる出演者とスタッフが続出してしまい、撮影が延期に次ぐ延期。 

そんなピンチ状態になっているにも関わらず、監督のジョン・ヒューストンは、映画撮影を完全無視して毎日のようにハンティングに繰り出していたそうです。 

その時、ハンフリー・ボガートは何をしていたのか? 共演のキャサリン・ヘプバーンと酒を酌み交わしながら楽しんでいたそうです。 

彼は酒豪と言われ、また酒乱とも言われ、お酒が大好きだったんですね。

ちなみに彼の好きなお酒の銘柄は『ドランブイ(スコッチウイスキーにハーブやスパイスを加えたリキュール)』で甘くてアルコール度数の強いお酒です。 


      


彼がどれくらいドランブイを愛飲していたかというと、ある行きつけのバーでドランブイの減り具合によって彼が旅に出ているかどうかが分かったという逸話もあるそうです。

カクテルでは『ジャック・ローズ(ニューヨークで誕生したカクテル)』も愛飲していたそうです。 


ジャック・ローズ(左側)
ジャック・ローズ(左側)

このカクテルはベースのアップル・ブランデーの『アップル・ジャック』のジャックと、バラの花の色合いを思わせる鮮やかな赤い色合いを組み合わせてこの名前が付けられたと言われています。 

甘味があって飲みやすいカクテルで、彼の好みに合っていたカクテルだと思います。 

このカクテルの標準的なレシピは、 

  • アップルブランデー(アップル・ジャック):30ml 
  • ライムジュース:15ml 
  • グレナデンシロップ:15ml 

を使います。

アルコール度数は20%程度となります。 

ちなみにジャック・ローズのカクテル言葉は『恐れを知らない元気な冒険者』なのだそうです。 

まさにハンフリー・ボガートにピッタリのカクテルですよね! 

そして彼は大好きなこれらのお酒をタップリと飲むのですが、彼と酒を酌み交わした人曰く、 『酒を飲む量に比例して口が悪くなる。』 と口を揃えて言っていたそうです。

頂点まで酔ってくると苛烈なまでの毒舌を吐いていたそうですが、本人は下ネタが大嫌いで、こういった類いの話はいくら酔おうが一切しなかったそうです。

しかも一緒に飲んでいる他の誰かが、酔っ払って下ネタを一言でも言おうものなら、苛烈な雷を落として激怒していたそうです。 

なぜそこまで下ネタを嫌うのか? 彼は敬虔なクリスチャンであったことが、その理由の一つに挙げられるのだそうです。 

ちなみに幾ら飲んでも、次の日には二日酔いで死んだような顔をしていたりとか、仕事を落としたとかいう事は無かったそうで、元気に出て来て演技をしていたそうです。 

ハンフリー・ボガートと酒、それはまさに『ハードボイルドの香り』そのものなんですよね!

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